水栓カートリッジの水漏れを自分で修理する方法と業者の料金相場を比較!
各家庭で今、一番設置されている水栓がシングルレバー混合水栓です。
そして、シングルレバー混合水栓で起こる水漏れで一番多いのは「水栓カートリッジの故障」による水漏れです。
水栓カートリッジが故障してしまった場合の改善方法は「水栓カートリッジ交換」一択で、水栓カートリッジ自体を修理することはありません。
この水栓カートリッジの交換が自分で出来れば、家で水漏れがあった時にとても役立つでしょう。
今回はDIYで水栓カートリッジを交換する方法、及び作業のポイントや注意点を水道修理歴10年以上のプロの解説でご紹介いたします。
また、自分で水栓カートリッジの交換する時の料金相場と、業者が行う場合の料金相場の比較も行っていきます、自分で直した場合と業者が直した場合の料金差の目安がわかると、「それならやっぱり自分で直した方が良い」「その料金差なら業者に任せた方が良いかな」等の判断基準にもなると思います。
目次
水栓カートリッジとは?
水栓カートリッジはシングルレバー混合水栓のレバーに接続している部品で、湯水の出し止め、湯水の切り替え及び温度調整を担っている部品です。
円筒状でレバー接続の軸棒がピンと飛び出ている形状をしています。
水栓カートリッジは基本的に、設置されている水栓のメーカーと同じものでなければ交換できない互換性のない部品です。
似ている水栓カートリッジがあったとしても、メーカーが違うと設置できませんので間違えないようにしましょう。
ちなみに2ハンドル混合水栓で湯水の出し止めを担っている部品は「コマパッキン」ですが、コマパッキンは互換性のある部品なので、メーカーを問わずに交換することができます。
一般的には右側が「水」で左側が「お湯」になっています。
お湯側の温度は左側に行けば行くほど高くなり、中央に近くなればなるほどぬるま湯になります。
このように様々な機能がある水栓カートリッジはシングルレバー混合水栓の心臓部であり、機能が多い分、水漏れや不具合が起こりやすい部品でもあります(例:吐水口から水漏れ、レバー下から水漏れ、水・お湯が出て来ない、お湯にならない等々)
ちなみに、シングルレバー混合水栓(水栓カートリッジ)には2つの吐水種類があります。
吐水種類 | 特徴 |
上げ吐水タイプ | ・レバーを上に上げると水が出て、下に下げると水が止まる ・近年ではほとんどが上げ吐水タイプになっている |
下げ吐水タイプ | ・レバーを下に下げると水が出て、上に上げると水が止まる ・昔に多かったタイプ |
昔のシングルシングルレバー混合水栓に多かった下げ吐水タイプが、なぜ上げ吐水タイプに移り変わって行ったかというと、1995年の起きた阪神淡路大震災が関係しています。
昔に多く使用されていた下げ吐水タイプはレバーを下げると水が出る構造でしたが、大きな地震が起きた時に荷物が落ちてレバーに当たり、水が止まらなくなるという被害が相次ぎました。
そのような被害が多発したことにより、今後同じ被害が起きないよう、逆の上げ吐水タイプへの移行が進んで行ったのです。
水栓カートリッジを購入する場合のポイントと注意点(値段、品物の選定)
自分で修理をする場合、水栓カートリッジも自分で準備することになります。
水栓カートリッジの値段はメーカーや型番によって差はありますが、おおよそ5,000円~10,000円位の品が主流です。
なので、水栓カートリッジの値段に関しては5,000円~10,000円を目安に考えていただければ良いと思います。
ただ、水栓カートリッジを自分で購入する時にもっと注意したいポイントは合った水栓カートリッジを購入するということです。
水栓カートリッジは色々な種類があるので、その中から家の水栓に合った水栓カートリッジを探すのは慣れていないと相当苦労をすることもあります。
いろいろ調べてもどうしても選定できない場合は、メーカーに相談するのが一番確実です。
補足として、水栓カートリッジと浄水カートリッジは全くの別物です。
「カートリッジ」で検索すると浄水カートリッジが多く出て来て、一向に該当の水栓カートリッジを見つけられないこともありますのでご注意ください。
ポイントは「水栓カートリッジ」「バルブカートリッジ」などで検索することです。
水栓カートリッジ交換のトラブル作業事例
水栓カートリッジ交換の時に起こったトラブル作業事例を紹介して行きます。
ケース① カートリッジカバーが固い
「洗面所の蛇口から水漏れする」という依頼がありました。
現場はマンションで築年数は20年以上、蛇口も同じ年月使っているとのこと。
状況を確認すると洗面シングルレバー混合水栓の根元に水溜まりが出来ていました。
調べてみると根元に溜まっていた水はレバーの下から少しずつ漏れて来たものでした。
症状的に水栓カートリッジの故障による水漏れと判断し見積書を提示したところ、施工依頼をいただいたので作業開始。
まず洗面台下の止水栓を閉めようとしたところ、かなり固着していました。
ハンドルタイプの止水栓でしたが手で回らなかったので、ウォーターポンププライヤーを使って慎重に閉めました。
止水をした後はレバーを外し、カートリッジカバーを外すことに。
ただカートリッジカバーの周りがカルキでかなり汚れていました、多分水漏れは随分前から起こっていたと思われます。
モーターレンチでカートリッジカバーを動かしてみると水栓本体が供回りし始めました。
危ないと思って一旦止め、蛇口本体の固定ナットをきつく締めてからカートリッジカバーの取り外しを試みましたが、どうにもカートリッジカバーが固く、取り外せない状況でした。
蛇口の本体交換をしないといけないかもしれない・・・と頭をよぎりましたが何とかカートリッジカバーを外せるよう模索しました。
幸い、洗面台がそこまで大きく無かったのでパイプレンチで洗面台下から水栓本体を掴み、モーターレンチで洗面台上からカートリッジカバーを取り外すことに。
中々難しい作業でしたが、何とかカートリッジカバーを取り外すことができました。
以降はスムーズに進み、水栓カートリッジを新しいものに交換し、カートリッジカバーとレバーを取り付け、止水栓を開き、通水確認して終了しました。
ケース② カートリッジを交換しても水漏れが直らない!?
「キッチン蛇口の先端から水漏れしている」という依頼がありました。
戸建ての現場で、水栓の使用年数は17年とのこと。
症状を見れば水栓カートリッジの故障でしたが、とにかく漏水量の多い水漏れでした。
水栓カートリッジ交換のお見積りを提示し、ご了承いただいたので交換作業を実施。
作業自体はスムーズに進み、後は通水確認のみ。
水を出して見ると無事に出たので安心して水を止めると、「あれ…、水が止まらない…」、おかしいと思い、何度か水の出し止めを行ったがやはり水漏れする状態。
作業前の様な漏水量の多さはないものの水漏れしているのは事実でした。
もう一度水栓カートリッジを取り外し、別の新しい水栓カートリッジを取り付けましたが状況は変わらず。
今回は水栓カートリッジだけでなく水栓本体部分の故障も水漏れの要因でした。
こうなると選択は水栓本体交換一択となります、お客様に状況を説明し、水栓本体交換の見積りを再提示。状況をご理解いただき、水栓本体の交換をすることになりました。水漏れは無事に改善しましたが、珍しいケースでした。
水栓カートリッジ交換に必要な工具、道具、部材
水栓カートリッジ交換をする時に必要な工具、道具、部材をご紹介します。
カテゴリー | 品名 | 用途 |
工具 | マイナスドライバー | 止水栓の開閉、各所の溝に差し込む |
工具 | プラスドライバー(※) | レバーの脱着、カートリッジ固定部の脱着 |
工具 | 六角レンチ(※) | レバーの脱着 |
工具 | モンキーレンチ(※) | カートリッジカバー脱着 |
工具 | モーターレンチ | カートリッジカバー脱着 |
工具 | ラジオペンチ(※) | 水栓内の破損部品取り除き |
工具 | カートリッジ取り外し工具(※) | KVKの台付1つ穴シングルレバー混合水栓用 |
道具 | 雑巾・タオル | 各所の水拭き |
道具 | ライト | シンク下、洗面台下を照らす |
道具 | 使い捨てゴム手袋 | 手の保護。薄手の使い捨てが作業しやすい。 |
部材 | 水栓カートリッジ | 交換する水栓カートリッジ |
※印は使用する水栓が限られている為、必ずしも必要とは限りません。
水栓カートリッジの交換に限らず、水漏れの部品交換修理は工具、道具、部材が無いとできません。
工具と部材はもちろんのこと、道具もきちんと用意して作業をしないとスムーズに作業を進めることはできません。
簡単なはずの作業なのに必要な道具が一つ無いだけで、とても困難な作業になることがありますので気を付けましょう。
自分で行う水栓カートリッジ交換方法
それでは水栓カートリッジの交換方法を見て行きましょう。
1.止水栓を閉める
- ハンドルタイプの止水栓は手を、溝タイプの止水栓はマイナスドライバーを時計回りに回して閉めます。
- 固い場合は決して無理をしないでください。経年劣化が進んでいた場合、無理に力を入れると止水栓自体から水漏れしたり、酷い場合は止水栓に接続している化粧管が折れたりします。
- 止水栓を閉めた後はレバーを動かし、ちゃんと止水出来ているかの確認をします。
2.レバーを取り外す
- レバーの接続は大きく分けて3パターンあります。
- ネジは反時計回りに回して取り外します。
- ネジは小さいので落とさない様に注意しましょう。
レバー接続パターン | 内容 |
はめ込み型 | ネジ止めは無くカチッとはめ込むタイプ、手で脱着する |
プラスネジ型 | 化粧キャップ内にあるネジでレバーを固定している、プラスドライバーで脱着する |
六角ネジ型 | 化粧キャップ内にあるネジでレバーを固定している、六角レンチで脱着する |
3.カートリッジカバーを取り外す
- モーターレンチを反時計回りに回して取り外します。
- 固い場合は決して無理をしないでください。
特に1つ穴タイプの場合は注意が必要です、無理に力を入れると水栓が供回りして下の水道管、水道ホースをねじ切ってしまうことがあります。
4.水栓カートリッジを取り外す
- 水栓カートリッジを取り外した時、パッキン等が水栓本体内に残っていることがありますので、取り除き忘れの無い様によくチェックしましょう。
- 周囲の水分は雑巾やタオルで拭き取っておきましょう、濡れたまま作業をすると交換後、濡れていた時に残り水か水漏れかの判断が難しくなります。
5.新しい水栓カートリッジをセットする
- 水栓カートリッジをセットする時は向きに注意して行ないましょう。
6.カートリッジカバーを取り付ける
- 手で時計回りに回して取り付けます、最後はモーターレンチで締めましょう。
7.レバーを取り付ける
- ネジ型の場合はネジを落とさない様に気を付けながら取り付けましょう。
- ネジは時計回りに回します。
- はめ込み型の場合はカチッと音がする所まで押し込みましょう。音がしない場合はちゃんとはまっていないので、一度取り外してもう一度取り付けてください。
8.止水栓を開く
- 手・マイナスドライバー共に反時計回りに回して開きます。
- 止水栓を開く時には必ずレバーが閉じていることの確認を忘れずに行いましょう、レバーが開いたまま止水栓を開くと全開で水が出て来てしまいます。
9.通水確認、動作確認を行う
- レバーを動かし、湯水がちゃんと出てちゃんと止まるかを確認します、3~4回は水の出し止めを行いましょう。
- チェック時には水漏れだけでなく、レバーの重さや音に関しても変な所が無いかをチェックしましょう。
作業をして行く過程で上手く出来ない場所(ネジが外れない、カートリッジカバーが外れない等)が出てきたら無理をせず、水道業者に依頼しましょう。
無理をすると高い確率でより酷い状況になりますので、くれぐれもご注意ください。
業者の水栓カートリッジ交換の料金相場
水道業者の水栓カートリッジ交換費用の相場は15,000円~25,000円位です。
自分で修理した場合と業者に依頼した場合の料金相場及び料金比較
自分で修理した場合にかかる費用の相場と、水道業者に依頼した時にかかる修理費用の相場を見比べてみましょう。
自分で修理した時の費用相場 | 業者が修理した時の費用相場 | |
作業代 | 0円 | 10,000円~15,000円位 |
工具代 | 4,000円~5,000円位 | 0円 |
道具代 | 1,000円~2,000円位 | 0円 |
部材代 | 5,000円~10,000円位 | 5,000円~10,000円位 |
合計 | 10,000円~17,000円位 | 15,000円~25,000円位 |
※工具代と道具代は一から全てを購入した場合で試算
自分で修理した場合は10,000円~17,000円位で、業者に依頼した場合は12,000円~25,000円位なので、単純計算で見ると差は5,000円~8,000円位となります。
もちろん既に持っている工具や道具があればもう少し差は広がります。
この5,000円~8,000円という料金差を「自分で作業をする手間」「自分で部材、工具、道具を準備する手間」「作業のリスク」「業者を探す手間」「業者作業の安心感」などといった項目で判断することになります。
どちらにするのが自分にとって良いかは人によって答えが分かれるところです。
「5,000円~8,000円位の料金差なら安心感を選ぶ」という方もいれば、「1円でも安くする為にやっぱり自分で修理する」という方もいると思います。
また、「その程度の料金差なの?」と思った方もいるのではないでしょうか。
どちらを選ぶにせよ、自分にとって何が大事かで判断すると良い選択ができると思います。
まとめ
水栓カートリッジの交換修理で難しいのは「部材の準備」と「カートリッジカバーの固着」です。
水栓カートリッジは互換性のない部品なので、ちゃんと合った水栓カートリッジを探さなければいけません。人によってはこの探す作業がとても大変と感じることもあるでしょう。
そして、カートリッジカバーが固着していた時は無理をせず、修理を断念することがベストの選択だと思います。
しかし、これらの点がスムーズに進めば水栓カートリッジの交換はさほど難しい作業ではありませんので充分、DIYで修理することができると思います。