洋式のトイレがつまりを起こしたら?道具ありと無しそれぞれの応急対処策
日本のトイレには和式と洋式の2種類のタイプがありますが、今では一般家庭の9割以上で洋式トイレが使われています。
洋式トイレのメリットはお手入れが簡単で衛生的、子供や高齢者まで誰もが使いやすい構造を持ち、さらには水を出して洗浄できるウォッシュレットのある家庭もあります。
しかし洋式トイレには和式トイレよりもつまりやすいという、意外なデメリットも潜んでいます。
その理由を探るべく、トイレがつまりやすい原因物質と洋式トイレ特有の構造、さらに万が一のための応急対策について解説しましょう。
目次
洋式トイレがつまる原因とは
トイレが突然つまると大変困りますし、一刻も早く直したくなります。
トイレトラブルの予防のためにはまず原因を知り、さらに洋式トイレの内部構造についても知識を仕入れていると便利です。
トイレがつまる原因物質
水位が急に下がった、または反対に逆流して汚水が上がってきた、そして流れなくなるなどトイレの水トラブルは、便器内部や排水管に原因となる物質が大量につまることによって起こります。
そのトップ3は以下の通りです。
- トイレットペーパーやクリーンシートなど水に溶けやすい紙類
- 排泄物や吐しゃ物などの汚物
- 紙おむつやプラスティック製の小さな異物など水に溶けないもの
トイレットペーパーは確かに水に溶けやすいとは言いますが、一度にたくさん流してしまうとつまりを起こすことがあります。
それだけでなく水溶性の紙類は完全に溶けてなくなることはなく、どうしても微量の繊維が残ってしまい、これが蓄積されるとつまりの原因になります。
また汚物や吐しゃ物はトイレの使用によって生じるので仕方がないとは言え、これも大量に流されると時にはペーパー類と同じ原因でつまりが起こることもあります。
さらに便器に誤って小さなおもちゃやスマートフォンなど、水に溶けない物質を落としてしまったというトラブルも意外によく聞く話です。
洋式トイレがつまりやすくなる構造上の原因とは
トイレと一口に言っても、和式トイレと洋式トイレでは見た目だけでなく流水や排水の仕組みが大きく異なります。
洋式トイレがなぜつまりやすいのか、その理由はタンクと排水管の構造にありました。
タンクからの水量が少ない
トイレでは用を足した後、洗浄レバーを回して汚物を水で流します。
洋式トイレの場合はタンクに貯められた水の圧力で押し流されますが、この時に水量が少ないとうまく流れず、排水管内に汚物の一部が滞留してしまうおそれがあります。
よく見かける例としては節水のためにペットボトルをタンク内に入れる、大便なのに小便用で流したという場合に発生しやすいです。
節水は大切な心がけではありますが、トイレタンクは流す物に合わせて適切な水量が設計されています。
また節水効果の高いタンクレストイレではこの傾向がより強まるので、つまり対策は小まめに行いましょう。
曲がりくねったサイホン式排水管
洋式トイレの排水管に採用されているのが、サイホン式という構造です。
サイホン式排水管は、水を目的地に運ぶまでの途中にいったん出発点よりも高い位置を通る構造をしています。
横から断面図を見ると、便座下でちょうどへの字型のような造りをしています。
サイホン式排水管では、以下の3か所がつまりやすいので注意しましょう。
- への字の付け根付近
- への字の最高地点付近
- 排水管の中間地点
なぜこのような構造なのかは節水やCO2削減を目的とした環境保全のためでありますが、複雑な形ゆえにつまる場所が多くなってしまいます。
洋式トイレのつまり解消の応急対策
もしトイレがつまってしまっても慌てないですむために、自分でできる応急処置の方法を知っているとひとまず安心ですね。
つまり解消の対処では専用の道具を使うと簡単にできます。
しかし緊急事態では道具を持ってない時があるため、そんな時でも身近なもので行える方法も併せて紹介しましょう。
専用道具を使う場合
トイレつまりの解消はシンプルに原因物質を除くこと、そのためにあると便利な専用道具は以下の3つです。
- ラバーカップ
- 真空式パイプクリーナー
- 専用ワイヤーブラシ
上記の道具を使ってつまりを除去する手順をそれぞれ紹介しましょう。
ラバーカップの使い方
トイレつまり解消の鉄板といえばやはりラバーカップ、棒の先に黒いゴム製のカップがついていて、すっぽんと呼ばれて親しまれています。
ラバーカップの正しい使い方は以下の手順です。
- 1.止水栓(または水道の元栓)を必ず締める
- 2.あらかじめ大きめのバケツなどに水を汲んでおく
- 3.便器の水の量を確認し、カップのゴム部分が浸る程度の量を目安に抜いたり加えたりして調整する
- 4.汚れ防止のためにビニール袋や新聞紙で養生する
- 5.ラバーカップを垂直に押しつけ、適度な力加減で引き、つまりが除去できるまで数回繰り返す
- 6.バケツの水を入れ、便器に流して最終確認する
- 7.止水栓を開け、レバーで普段通りに水を流す
ラバーカップを選ぶポイントは必ず洋式用にすること、その見分け方はカップの底の先が出っ張っているものでなければなりません。
出っ張っていないものは和式トイレ用なので注意しましょう。
真空式パイプクリーナの使い方
真空式パイプクリーナーとはラバーカップと似た構造の道具で、より強力な吸引力があり、さらなる除去効果に期待が持てます。
ゴム製のカップが付いたパイプの上部にレバーがあり、これを引くことで原因物質を取り除きます。
使用の手順はラバーカップと同じです。
専用ワイヤーブラシの使い方
ワイヤーブラシとは文字通り、ワイヤーの先端にブラシが付いていて、管の中に通して詰まっている原因物質を削り落とす道具です。
専用ワイヤーブラシの手順は以下の通り、もちろん元栓は必ず締めてから作業しましょう。
- 1.汚れ防止のためにビニール袋や新聞紙で養生する
- 2.便器の前に立ち排水路の場所と水が流れる方向を確認する
- 3.ワイヤーの先端ブラシを挿入、自分の方向に水が流れる時は手前に、逆方向に流れるときは反対側に向ける
- 4.ゆっくりと押し込み、何かに当たる感覚があるところでクランクを回し、つまりを削る
- 5.つまりが取れて水位が下がったらゆっくりと引き抜く
- 6.元栓を開けレバーをいつも通り回して流れを確認する
ワイヤーブラシは少しコツが要りますが、慣れないうちはゆっくり慎重に行うと失敗が少なくなります。
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専用道具を使わない場合
道具がない場合でも、トイレのつまりを応急処置できる方法があります。
ペットボトルなど身近なものを使って行えるので、緊急時には試してみましょう。
重曹と酢
つまりの程度が軽い場合は、重曹と酢(またはクエン酸など)を使って汚れを落とす方法もあります。
環境に優しいエコ洗浄として注目され続け、利用する人は増えています。
使用方法は、ペットボトルを切ったカップなどで水を汲み取った後、便器内に重曹をふりかけその上から酢を加えて発泡させます。
この泡がクリーナーと似た役割を果たします。
最後に水またはぬるま湯をかけ流して完了ですが、この時に熱湯を使うと熱による便器の破損に繋がりますので絶対に使わないようにしましょう。
水の落下作用でつまりを押し流す
便器の上の高いところから水を流してつまりを押し流す方法です。
ペットボトルを切ったカップなどで水を汲みだしてバケツなどに取って減らした後、腰くらいの位置から大きめのバケツや洗面器などにいれた水を勢いよく流し落とします。
つまりが取れた後、作業前に汲みだした汚水を流します。
意外なものがワイヤーブラシの代用に?
ワイヤーブラシがない時、洋服をかけるワイヤーハンガーでも代用できます。
ハンガーを延ばし先端部分をらせん状に丸め、ワイヤーブラシの手順と同じように使います。
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洋式トイレのつまりは水道工事店に依頼するのがおすすめの理由
洋式トイレがつまった場合でも、専用の道具を使えば一時的にはつまりを解消することができます。
しかし一度つまってしまったトイレはつまりを繰り返しやすくなっています。
応急処置を施したのになぜ何度もつまるのか、その理由を検証してみましょう。
トイレがつまりを繰り返す原因
トイレが何度もつまる原因には、水流や水圧の減少、蓄積された汚れ、そして排水管やトイレ器具の寿命というのが多くを占めています。
こうした現象はなぜ起こるのでしょうか。
水流と水圧を低くするタンクのつまり
洋式トイレの仕組みはタンクに貯められた水の力で汚物を下水道まで流していきますが、使用していくうちに内部に汚れが溜まり、レバーから流れる水の動きを滞らせていきます。
日常のお手入れでは便器内を掃除することはあっても、タンクの中まで掃除する人は大変少ないため、原因を見過ごしてしまいます。
タンクの上に置くタイプの洗浄剤を使っている場合にそのケースが起こりやすいので特に注意しましょう。
応急措置で取り切れないつまりに気づきにくい
トイレのつまりはラバーキャップやワイヤーブラシを使えば、原因となっている物質をある程度まで除去できます。
適切な処置をして元通り水が流れると安心しますが、その後も使っていくうちにつまり物質は蓄積されていきます。
こうした現象は応急対処で除去できる範囲よりもさらに奥の方、目に見えない場所で起こっているため気づくことが難しいです。
排水管や便器の寿命
家電などと同様、トイレをはじめとした水回りの設備にも耐用年数があります。
メーカーによる違いはありますが、便器も排水管もともに平均10年程度くらいが寿命とされています。
この年月を過ぎても使い続けると器具そのものだけでなく、水漏れを防いでいるパッキンなどの部品も劣化していきます。
排水管の部品はタンクの内部よりもさらに見る機会が少ないため、こちらも気づかれにくくなってしまいます。
もう二度とつまらせないためには適切な対処法が必要
トラブルが起こるとトイレが使えなくなってしまうだけでなく、衛生上の問題もあるのでトイレのつまりだけは何としても起こしたくない、一度経験すると誰もがそのように思います。
しかし水回りのトラブルは使い続ける限り再び起こる可能性は十分高く、放置したままで改善することはまずありません。
そこで必要なのが専門業者による適切な修理交換です。
水道工事のプロができるつまり解消法は、応急処置のそれと比べて優れています。
業者で主に行われる修理方法を説明しましょう。
トイレのつまり解消は洗浄がおすすめ!業者の排水管高圧洗浄の費用
薬剤によるつまり除去
つまり対策でポピュラーなものに原因物質を溶かす専用の液体洗浄剤もありますが、トイレつまりにこの方法はおすすめできません。
市販の強アルカリ洗浄剤が溶かせるのは以下の物質です。
- キッチンの油汚れや食べ物のかす
- 洗面所や浴室での髪の毛
- その他排水溝に付いた汚れ
これを見て分かる通り、トイレの場合は原因物質が違うので効果が期待できません。
さらに誤った使用方法によって便器を変質させたりする恐れもあります。
水道工事店ではトイレのつまりにはまず専用の薬剤でつまり物質を溶かし、様子を見ながら必要に応じて別の作業を付加します。
ローポンプの使用
ラバーキャップにあたるものが業者で使用するローポンプです。
形状は真空式パイプともよく似ていてつまり除去の原理も同じですが、業務用のローポンプはさらに強力な吸引力があります。
ローポンプで解消しない場合は高圧洗浄機で強力な圧力で水を送り、つまりを下水管に押し流します。
トーラーの使用
トーラーとはワイヤーブラシに相当するもので、細いワイヤーの先にブラシヘッドが取り付けられ、配管にこびりついた汚れをこすって落としていくという原理も共通しています。
業務用には手動式と電動のものがありますが、コツの必要なワイヤー洗浄では手慣れたプロの腕によって短時間で汚れ落ちが実現します。
ファイバースコープによる管内調査
工事をするにあたってつまりの原因が分からない場合には、専用のカメラを使って排水管内を観察することもあります。
トーラーに使用されるものと似たワイヤーの先にスコープ(カメラ)が取り付けられ、管内に挿入して内部の状態を調べます。
費用節約の意外な盲点とは
専門業者に依頼した場合のつまり除去力のすごさは分かったものの、誰もが気になるのがお金の問題です。
費用を節約したくて自分で直してしまう人も少なくありませんが、果たして本当に安上がりなのでしょうか。
その事実を知るために、まずつまり除去道具の平均価格を見てみましょう。
道具名 | 平均価格 |
---|---|
ラバーカップ | 1500円 |
真空式パイプ | 2500円 |
ワイヤーブラシ | 3000円 |
一方、業者に依頼した場合の修理費用の相場は以下の通りです。
料金は基本料金を含んだ平均ですが、作業範囲によって別途加算される場合もあります。
つまり除去の修理内容 | 料金相場 |
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薬剤使用の軽作業 | 6000円程度 |
ローポンプ使用 | 8000円程度 |
高圧洗浄機使用 | 15000円~ |
トーラー使用 | 10000円~ |
管内カメラ調査 | 20000円~ |
確かに価格だけを単純に比較すると、自分で道具を買って修理する方が安いのは事実です。
しかしその一方で、自己流の修理にはこんなデメリットがあることを忘れてはなりません。
- 作業のための手間や時間がかかる
- 道具の置き場所や管理が必要
- 取り切れない汚れが残ってしまう
- トラブルのたびに修理すると業者修理の1回分よりもお金がかかる
寿命が来たらどちらにしろ交換すると考えると、早いうちに業者に依頼して修理回数を少なくすることが結果的に節約になります。
長い目で見れば業者修理の方がお得という、大変意外な結果となりました。
まとめ
洋式トイレがつまりやすい理由には、タンクの水量や曲がりくねった排水管といった特徴的な要因があります。
もしつまった時はラバーキャップやワイヤーブラシなどの専用道具、または重曹や水を高い位置から流すといった方法で一時的に抑えられます。
しかし一度トラブルを起こしたトイレはつまりを繰り返しやすくなっているので、早いうちに専門業者に依頼して本格的に修理するのがおすすめです。
1回の修理の金額は高いですがその分時間や労力は大幅カット、そして何よりももうあの恐ろしいトイレのつまりを経験しなくてすむことこそ、プロに依頼するための大きな意味がありますね。