
シングルレバー混合水栓の水漏れは、原因によって「パッキン交換」で直る場合と、「カートリッジ交換」が必要になる場合があります。
まずは水漏れ箇所を特定し、適切な対処法を見極めることが大切です。
この記事では、水漏れ箇所の見分け方や、パッキン・カートリッジの交換手順、必要な部品・工具の選び方をわかりやすく解説します。
また、DIYでの修理に不安がある方のために、業者へ依頼する際の目安や費用相場についても紹介します。
快適なキッチンやお風呂を維持するために、水漏れ修理の参考としてご活用ください。
シングルレバー混合水栓が「パッキン交換」で直るケース
シングルレバー混合水栓からの水漏れは、パッキンだけが原因とは限りません。水漏れ箇所によって、交換による修理が可能かどうか判断できます。まずはどこから漏れているのかを見極めましょう。
症状別に当たりをつける【吐水口・根元・ハンドル下・本体接続部】

シングルレバー混合水栓の水漏れを修理するには、漏れている場所を正確に特定することが重要です。
ハンドル操作で水を止め、周囲を拭き取ってから少しずつ通水すると、漏れ箇所に水がにじんでくるため、漏れている個所がわかります。
漏れの場所によって、修理内容が変わるため、下の「水漏れ箇所と原因早見表」を参考に当たりをつけましょう。
吐水口・根元・ハンドル下・本体接続部の4か所がよくある水漏れポイントです。
| 水漏れ箇所 | 主な原因 | 対処 |
| 吐水口 | エアレーター(フィルター)のつまり/カートリッジ(※)の摩耗 | 清掃・カートリッジ交換 |
| スパウト根元 | Oリング・Uパッキン・Xパッキンなどの劣化 | パッキン(Oリング)交換 |
| レバーハンドル下 | カートリッジの劣化/固定ナットの緩み | ナット締め直し/カートリッジ交換 |
| クランク・本体接続部 | 平パッキンの劣化 | パッキン交換 |
| クランクと壁の給水管接続部 | シールテープの劣化 | シールテープの巻き直し |
※カートリッジ : シングルレバー混合水栓で、水量と温度を調節している部品です。
劣化すると、水漏れやレバーハンドルが重くなる、動きが固くなるといった不具合が生じます。
交換前にチェックする耐用年数と使用環境
パッキンやカートリッジは、水質や水の使用量など、使用環境によって劣化の進み方が変わります。
前回取り替えたのがいつかわかる場合は、経過年数を確認しましょう。
時期がわかれば、特定のパッキンだけでなく、パッキンの総交換やカートリッジ交換も一緒に行うなどの判断材料になります。
一般的にシングルレバー混合水栓のパッキンは10年前後で硬化や摩耗がおこるとされており、カートリッジは約5年が寿命といわれています。
パッキンは安価ですが、カートリッジは5,000~10,000円と高価なため、パッキン交換で改善しない場合に、カートリッジ交換を検討してもいいでしょう。
なお、賃貸住宅ではパッキンやカートリッジの交換前に管理会社へ連絡しましょう。
費用負担や万が一の破損時のトラブルを避けるために、自己判断で交換するのは避けるべきです。
パッキン交換で解決しやすいのはどれ?

水漏れの中には、パッキン交換で解決しやすい箇所もあります。
まず、スパウト根元のにじみで、本体にある上下2か所のパッキンの交換が基本です。
壁付タイプでは、クランク部の平パッキンの交換と増し締めで水漏れが止まるケースが良くあります。
ハンドル下の水滴は、ナットの緩みが原因のこともありますが、締めても漏れる場合はカートリッジの劣化が原因です。
パッキン交換で直らない場合は、カートリッジや水栓本体の交換も検討するタイミングといえるでしょう。
準備編:型番の探し方・必要な部品と工具
パッキンの交換時には、型番の確認が必要です。
メーカーや水栓によって、パッキンの種類が異なるため、購入前にしっかり確認しましょう。
また、必要な工具もメーカーによって異なる場合があります。
パッキンやカートリッジの型番の探し方と必要な工具を紹介します。
水栓のメーカー・型番の見つけ方

シングルレバー混合水栓の型番は、適合するパッキンやカートリッジを探す際に必要になります。
水栓の取扱説明書があれば、型番や取り替え部品の品番も記載されています。
取扱説明書がない場合は、本体胴体のラベルや刻印をチェックしましょう。
ラベルの文字が消えてしまっている場合は、刻印を確認してメーカーを特定し、メーカーサイトなどで外観から型番を探すという方法もあります。
LIXIL(LIXIL部品ナビ)とTOTO(TOTO水栓金具品番特定システム見つかるちゃん)は、水栓の特徴から公式サイトで型番の絞り込みができます。
| ■古い水栓の刻印について INAXは現在LIXILブランドに統合されており、MYM製品はKVKがメンテナンスを引き継いでいます。 メーカー確認の際は注意しましょう。 |
用意する部品(パッキン/スパウトパッキン/平パッキン)
シングルレバー混合水栓の型番がわかれば、メーカーの公式サイトで型番を検索し、取り替え部品の品番を確認して購入しましょう。
品番が不明な場合は、外したパッキンをホームセンターに持っていき、同じものを購入するという方法もあります。
■ポイント
- スパウト部分のパッキンは、メーカーや型番によってサイズ・形状が異なるため注意が必要
- カートリッジはメーカー・品番により全く異なるため、必ず水栓に適合するものを使う必要があります。
必要な工具【モンキーレンチ/六角レンチ/ドライバー】

シングルレバー混合水栓のパッキン交換をする際に、必要な工具を確認しておきましょう。
| 工具・道具 | 使用箇所 |
| モンキーレンチ/ウォーターポンププライヤー | ・ナットやカバーの着脱に使用 ・水栓の根元を固定するときは、当て布をすると傷防止になる |
| ドライバー(+/-) | ・レバーのビスキャップを取り外した後にビスを外すのに使う |
| ピンセット/精密ドライバー | ・パッキンを外すときに使う |
| 六角レンチ | ・TOTOの水栓のレバーを外すときに必要(メーカーによっては不要) |
| 本体固定用工具 | ・各水栓メーカーから専用のものが市販されている。ウォーターポンププライヤーで代用が可能な場合もある |
| タオル | ・作業中の水拭き用 |
事前に必要なものをそろえることで、作業中の中断を防ぎ、効率的に修理が進められます。
作業前の準備|止水栓を閉める

パッキン交換を始める前に、必ず止水栓を閉め、レバーを操作して給水管内に残っている水を出し切ります(水抜き)。
水栓が見当たらない場合や、閉められない場合は、元栓を閉めます。
止水栓はその水栓だけの水を止めますが、元栓を閉めると家全体の水が止まるため注意が必要です。
■止水栓の場所
止水栓はキッチンならシンク下収納庫の奥、浴室は水栓のクランクの付け根や、水栓の下側にあります。
■元栓の場所
戸建てであれば、敷地内地面に設置されているメーターボックス内のハンドルです。
マンションはドア横のパイプスペースの中、水道メーターの隣に設置されています。
アパートの場合は、敷地内の1階の通路や塀際にまとめて設置されていることがあります。
【交換手順】シングルレバー混合水栓のパッキン・カートリッジの交換
キッチンのシングルレバー混合水栓で、スパウト根元からの水漏れの原因となる本体パッキンの、交換手順を紹介します。
まずはレバーハンドルとカバーの外し方から確認していきましょう。
初めて交換する場合は、自分の分解手順(【手順1】と【手順2】)をスマホで撮影しておくと安心です。組み立て時に迷った時でも、動画や写真を見直して参考にできます。
1、レバーハンドル・カバーの外し方

まずはレバーハンドル部分を外す作業から始めます。
【手順1】
- レバー中央にあるビスキャップを細いドライバーなどで外し、固定ビスを緩める
- レバーハンドルを上に引き抜くと、ナットとカートリッジ上部が露出する
- 次にカートリッジ保護カバーを外す。
作業中は本体根元をモンキーレンチまたはウォーターポンププライヤーでしっかり固定し、カバー上部のナットをモンキーレンチで回す。 - ナットが緩んだら手で回して上に引き抜くと、カートリッジが外せる
2、スパウトの取り外しと古いパッキンの除去

レバーハンドルとカバーを外したら、次はスパウト(吐水パイプ)の取り外しです。
【手順2】
- スパウトを真上に引き抜くと、樹脂ワッシャーが現れるので、なくさないように取り外す
- 本体胴体の上下の溝にある古いパッキン(Oリング・Uパッキン・Xパッキンなど)を、精密ドライバーなどで慎重に外し、溝と胴体をきれいに清掃する
- 下部にも樹脂ワッシャーがあるため、忘れずに取り外す
3、新しいパッキンとカートリッジの装着と組み戻し

新しいパッキンを取り付ける際は、向きとねじれ防止がポイントです。
ねじれた状態で取り付けると水漏れの原因になるため慎重に行いましょう。
【手順3】
- まず本体下部に新しい樹脂ワッシャーを入れ、続いて新しいパッキン(Oリング・Uパッキン・Xパッキンなど)を2個、向きに注意しながらまっすぐ装着する
- スパウトを本体に真っすぐ差し込み、上部にも樹脂ワッシャーを取り付ける
- カートリッジを戻し(カートリッジを交換する場合は、ここで新しいものに交換する)カートリッジカバーを手で締めた後、根元をモンキーレンチなどで固定し、上部ナットをしっかり締める
- レバーを差し込み、固定ビスとキャップを取り付けて組み戻す
- 最後に通水テストを行い、レバー操作やスパウトの回転時に水漏れがないかを確認する
よくあるミスと対策
パッキン交換でよくある失敗は、本体に取り付けたパッキンのねじれによる水漏れです。
取り付け時は無理に押し込まず、向きを確認しながら丁寧に装着しましょう。
また、ナットを強く締めすぎるとレバーの動きが重くなるため、手応えを感じたら、軽く増し締めする程度にし、レバーの動きや水漏れを確認してください。
緩い場合は、少しずつ締め直して調整しましょう。
組み立て後は通水し、全開・全閉や左右の温度切り替え、スパウトの首振りによって漏れがないか確認します。
一晩置いて翌朝も濡れ跡がなければ安心です。スパウト先端のエアレーター(フィルター)も清掃すると、水の出がよりスムーズになります。
【交換手順】浴室の壁付シングルレバー混合水栓のパッキン交換
浴室の壁付シングルレバー混合水栓は、クランク接続部や吐水部のパッキン劣化による水漏れが考えられます。ここでは、よくある漏れポイントごとの交換手順をわかりやすく解説します。
作業前に止水栓を閉めることを忘れないようにしましょう。
クランクと本体の接続部分のパッキン交換
クランクと本体の接続部は、パッキンの劣化による水漏れが多い箇所です。
【手順】
- 止水栓を閉める
- 左右のクランクナットをモンキーレンチで緩め、水栓本体を取り外す
- クランクの中にある古いクランクパッキンを取り外し、新しいパッキンに交換する
- 水栓本体を再び取り付け、左右のナットを少しずつ締め、最後にモンキーレンチでしっかり締める
- 止水栓を開けてハンドルを操作し、通水テストを行い、水漏れがないか確認する
パッキンの向きや位置がずれていると再び漏れる原因になるため、よく確認することが交換のポイントです。
スパウト(吐水パイプ)根元のパッキン交換
スパウト(吐水パイプ)根元からの水漏れは、スパウトパッキン(Uパッキン)の劣化が原因です。
スパウトパッキンの交換は比較的簡単です。水栓のサイズに合ったパッキンを準備します。
一般家庭では「呼13(外径16mm)」というサイズが多いですが、他のサイズであるケースもあるため、品番を確認して購入が安心です。
【手順】
- 止水栓を閉める
- モンキーレンチでパイプナットを緩め、パイプと古いUパッキンを取り外す
- 新しいパッキンを向きに注意して装着する
- パイプを取り付けてナットを締める
- 止水栓を開けて通水テストを行い、漏れがないか確認する
壁との接続部のシールテープ交換

壁付シングルレバー混合水栓の壁とクランクの接続部に水漏れがあれば、シールテープの巻き直しを行います。
この作業は、DIY初心者にとってはやや難易度が高いかもしれません。
壁との接続部を外すため、止水栓ではなく必ず水道の元栓を閉めてください。
【手順】
- 水道の元栓を閉める
- 左右のクランクナットをモンキーレンチで緩め、手で回してクランクから本体を外す
- 壁側の取り付け足(クランク)を手で反時計回りに回して外す
- 取り外したら、配管内とクランクのネジ山の汚れや古いシールテープを古歯ブラシなどでしっかり清掃する
- クランクを壁装着し、時計回りに何回転で止まるかを確認してからいったん外し、クランクのネジ山にシールテープを引っ張りながら6~7回巻き、なじませる
- 壁の給水管に、クランクを時計回りに取り付け5)で確認した回す回数より1回転少ない位置で仮止めする。
このとき、左側のクランク部がやや右斜め上向き、右のクランク部が左側に倒れた「へ」の字の形で止まるよう調節する
【注意!】シールテープを巻いたクランクは逆に回すとシールテープがよれて水漏れの原因になるため、慎重に作業してください。 - クランクと本体の取り付け部にパッキンを入れ、左クランクに本体を仮止めし、右のクランクに本体を取り付ける
- 混合栓を時計回りにゆっくり動かし、水平になる位置に合わせる
- クランクナットをしっかり締めて、元栓を開け通水テストを行い、水漏れがないか確認する
固着やサビへの対処
長年使用した水栓は、固着やサビでナットが回らないことがあります。
その場合は、浸透潤滑剤(クレ5-56など)を吹きかけ、しばらく時間を置いてから再度緩めてみましょう。
緩める際に、ナットのメッキ部に当て布をしてモンキーレンチを使うと傷防止になります。
強引に回すと破損の恐れがあるため、無理な場合は早めに業者へ依頼しましょう。
DIYか業者か:依頼判断の目安と費用相場
パッキン交換は初心者でも比較的取り組みやすい作業ですが、水栓の状況によっては自分で行うよりも、専門業者に依頼した方が安心な場合もあります。
ここでは、業者に依頼すべき判断基準とその際の費用相場を解説します。
業者に依頼するケース
業者に水栓のパッキン交換を依頼した方がよいのは、次のようなケースです。
- 自分で交換する時間がない、自分での交換は自信がない場合
- 止水栓やナットが固着して回らない、または作業中にネジ山をつぶしてしまい、自分では修理できない場合
- パッキンを交換しても水漏れが改善しない、あるいは適合するパッキンやカートリッジがわからない場合
このような作業を続けるのが難しい場合は、早めに専門業者へ依頼することで、スムーズにパッキンの交換ができ、水栓を使えるようになります。
業者依頼のメリットと作業費用

業者に依頼するメリットは、短時間で確実に修理できることと、予想外のトラブルにも対応してもらえる安心感です。
自分で作業する場合は交換部品選びや手順の確認、硬くて回らないナットなどで時間がかかりますが、業者であれば正確な部品を選び、プロの技術と道具で適切な作業を行ってくれます。
また、水漏れを放置して、水栓の状態が悪化する前に修理できるため、結果的に費用を抑えられる場合もあります。
以下は主な修理内容の料金目安です(作業内容・地域・時間帯によって異なります)。
| 作業内容 | 料金目安(税込) |
| 混合水栓のパッキン交換 | 3,000円~ |
| カートリッジ交換 | 8,000~10,000円 |
| シャワーホース交換 | 10,000円~ |
| レバー部分交換 | 6,000円~ |
| スパウト部交換 | 8,000円~ |
| 偏芯管(クランク)交換 | 6,000円~ |
| シングルレバー混合水栓のカートリッジ交換 | 8,000~10,000円 |
| 混合水栓本体交換 | 12,000円~ |
※部材費(パーツ代)は別途
※このほかに業者によって、出張料・時間外料金・延長作業費などが加算されます。
問い合わせ時に基本の料金を確認し、正確な金額は現地での事前の見積もりをしっかり確認しましょう。
賃貸の場合の注意
賃貸物件でのパッキン交換や水栓修理は、自己判断で作業しないことが大切です。
水漏れやレバーハンドルの異常などに気付いたら、まずは管理会社または大家に連絡し、修理の可否や費用負担について確認しましょう。
通常、劣化による設備の交換費用は貸主側(管理会社・大家)の負担になります。
勝手に交換して破損させた場合や、管理会社の指示なく交換してしまった場合は、修理費を自己負担することになるケースがあります。
また、トラブル防止のため、事前に水漏れの状態を写真で記録しておくと安心です。
業者に依頼した場合は、見積書や領収書をすべて保管しておきましょう。
後の費用精算や原状回復時の証拠として役立ちます。
正しい型番確認と手順で、初心者でもパッキン交換は可能
シングルレバー混合水栓のパッキン交換は、交換パッキンを正しく選び、手順を押さえれば初心者でも対応が可能です。
交換の基本的な流れは、「1.水漏れ箇所の特定 → 2.パッキン・カートリッジの品番確認 → 3.部品購入と工具の準備 → 4.止水栓(または元栓)を閉める → 5.交換作業 → 6.通水確認」です。この流れをイメージしながら進めていきましょう。
交換に不安がある場合や作業が難しいときは、業者に依頼するのが早くて確実です。

